「その数字、根拠は?」。本番でこう聞かれて詰まった経験はありませんか。自分の資料の穴は、自分では見えにくいものです。
結論から言います。AIには穴を探させるだけ。穴を埋める答えは自分で書く。
試しに答えまでAIに書かせたら、AIは資料にない単価や体制を「決まったこと」として書いてきました。そのまま読んでいたら、部長の前で決めてもいない約束をするところでした。
この記事でわかること:
- 書かれていない情報を先に洗い出す指示文(コピペ可)
- 聞き手の立場別に質問を出させ、3つに仕分ける方法
- 仕分けたあと資料を直す・本番前に決める手順
この記事で使うツール
無料のAIチャット+PowerPoint(追加インストール不要)
必要なもの:発表するPowerPointファイルと、ブラウザで使えるAIチャット(無料枠でOK。検証はChatGPT無料版)。 できること:資料の穴と想定質問を洗い出して仕分ける。プログラミング不要。
なぜ想定質問をAIに頼むのか——質問は得意、答えには作り話が混ざる

作った本人は、書いていないことを頭で補って読みます。AIは初めて読む他人なので、「ここが書いていない」に気づけます。
たとえるなら健康診断です。AIは問診票(質問)を作るのは得意です。でも診断書(答え)まで任せると、検査していない数値まで書き込んでしまいます。
穴を仕込んだダミー資料で確かめました。
- 資料:架空の社内提案「経費精算のクラウド化」(スライド11枚)。導入予算は初期480万円・月額12万円
- 仕込んだ穴5つ:①費用の内訳 ②他社との比較 ③導入後の体制 ④「月200時間削減」の出し方 ⑤300名一斉導入の手当て(どれも書いていない)
- 試し方:ChatGPT無料版。毎回、履歴に残らない「一時チャット」を新しく開いた(2026年9月・各1〜2回)
正直な失敗談:答えまで書かせたら、作り話で穴を埋めてきた
失敗① 答えの下書きまで頼んだ。
「この提案に対して、聞き手(予算を握る部長)から出そうな質問を5つ挙げてください。それぞれに対する答えの下書きも作ってください」と頼むと、答えに資料にないことが混ざりました。
- 「人件費単価を1時間あたり3,000円として換算しています」
- 「導入後3か月程度は実績を計測し…」
- 「操作説明を行い…問い合わせ窓口を設けて…」
資料にあるのは「月200時間」と「年間約720万円」だけで、単価はありません。3,000円は720万円を「200時間×12か月」で割った逆算の値で、計算は合っています。
問題は、それを最初から決めていた単価のように言い切ったことです。本番なら「その3,000円の根拠は?」で詰まります。
窓口や3か月の計測は、資料にも私の頭にもない体制と計画です。AIは穴を指摘する代わりに、答えの中で穴を埋めていました。
この頼み方は、以前プレゼン資料の構成をAIで作る方法|スライド作成前のストーリー設計で紹介したものです。同じ頼み方で試すと、資料にない前提を答えに書いてきました。あちらの方法で答えの下書きを作る場合も、そのまま読まずに、資料に書いてあることかを確かめてください。穴を探すのが目的なら、答えは最初から自分で書きます。
失敗② 前置きなしで頼んだら50問。
「想定質問を出して」とだけ頼むと50問。穴5つは全部入っていましたが、約4分の1の13問は「セキュリティは大丈夫か」のようなどの提案にも聞ける一般論でした。前の晩に50問は読めません。
穴を先に塞ぐ5つの手順

AIに頼むのは、STEP2とSTEP3の2つだけ。残りは自分の仕事です。
STEP1 アウトラインを渡す
渡し方はパワポの資料チェックをAIに任せる方法|誤字・体裁・数字の点検術と同じです(あちらは誤字や数字の点検、こちらは答えられない場所の点検)。表示タブ→アウトライン表示→左側を全選択してコピー→メモ帳に貼り、社名や人名を仮の名前に置き換えます。図形やグラフの中の文字はアウトラインに出てこないことがあるので、手順1で「書かれていない」と出ても、図の中に書いてある場合があります。
注意
貼った内容はAI事業者のサーバーへ送られます。一時チャットでも、最大30日保管されることがあります(執筆時点の公式ヘルプ)。詳しい線引きは会社PCでAIを安全に使う方法|情報漏洩を防ぐ設定と使い分けを参考に。
STEP2 穴と質問を出させる
1回の指示で手順1〜3をやらせます。【】の中は自分の場面に書き換えてください。
これから貼るのは、社内提案のプレゼン資料のアウトラインです。 目的は、【部長に導入予算を承認してもらうこと】です。 手順1:【予算を承認する人】が、OKを出すかどうかを決めるときに知りたいはずの情報を考えてください。そのうち、この資料に書かれていないものを、箇条書きで漏れなく挙げてください。 手順2:次の3人の立場で、本番で聞かれそうな質問を出してください。 ①【決裁者(予算を承認する部長)】 ②【経理部の担当者】 ③【実際に使う営業部員】 各立場3〜5問。一般論ではなく、この資料の中身を突く質問にしてください。 手順3:すべての質問を次の3つに仕分けてください。 A:資料の中で答えられる(該当スライド番号を書く) B:答えの根拠が資料に書かれていない C:答えに詰まりそう(まだ決まっていない・自分の判断を超える) 答えの文章は書かないでください。 資料にない数字を補わないでください。 出力は「立場 / 質問 / 仕分け(A・B・C) / 該当スライド番号 または 足りない情報」の表でお願いします。
※実際に試した指示文には、手順2の末尾に「手順1で挙げた情報は、どれかの質問に必ず入れてください」という1行がありました。AIが守らなかったので外しています。
手順1なしで立場だけ指定した2回では、13問と15問のうち、一般論は0問と1問に減りました(前置きなしでは50問中13問)。
ただ、2回とも、決裁者が聞きそうな「480万円の内訳」と「他社との比較」の質問は出てきませんでした。
予算の出どころや、なぜこのサービスを選んだかを気にする人(購買や情報システムの担当など)を立場に入れなかったせいかもしれません(そこまでは試していません)。
そこで手順1の「書かれていない情報」を先に出させると、そのリストに穴5つが全部入りました。質問の方では、同じ2つが抜けたままでした。
資料を直すためのチェックリストは手順1のリスト。質問は本番の練習用。役割を分けて使います。
STEP3 「答えられる」を引用で確かめる
仕分けはAIも間違えます。「スマホで領収書を撮影するだけで、今の申請書への記入は本当に不要になるのか?」。AIはこの趣旨の質問を、2回とも「A:スライド5で答えられる」と仕分けました。
でもスライド5にあるのは「スマホで領収書を撮影して申請」だけ。記入が要らなくなるとは、どこにも書いていません。そこで、続けてこう送ります。
Aに仕分けた質問それぞれについて、答えになる資料の文言を、そのまま引用してください。 そのまま引用できない場合は、Bに移してください。 引用以外の説明は1行までにしてください。
するとAIは、Aに仕分けた2問(この質問と「外出先からでも承認・申請まで完結できるのか?」)を、自分でBに移しました。証拠の一文を出させるのがコツです。
STEP4 資料を直す・決める

B(根拠が資料にない)は、資料を直す場所です。本編に1行足すか、付録(Appendix)のスライドに回します。
パワポの枚数を減らす方法|AIに削るスライドを選ばせて持ち時間に収めるは削る側から付録を作る話。こちらは質問から逆算して付録を足す話です。
C(答えに詰まる)は、まだ決まっていないことです。上司や関係部署に確認して本番前に決めます。決められなければ「持ち帰ります」と答えると決めておきます。
STEP5 答えを自分で書く
AIに頼んでよいのは「答えの材料が資料のどこにあるか」まで。答えの文章は自分で書きます。
付録のスライド番号は手元に控えます。スライドショーの途中で番号を入力して Enter(Macは Return)を押すと、そのスライドへ移動できます(Microsoft公式ヘルプで確認)。付録を非表示スライドにしている場合は、番号で出せるかを本番前に一度試しておいてください。
結論:明日からのチェックリスト
- 質問より先に「書かれていない情報」を洗い出させた
- 聞き手の立場を3人指定し、A・B・Cの3つに仕分けさせた
- 「答えの文章は書かないで」「資料にない数字を補わないで」を付けた
- Aに仕分けた質問は資料の文言を引用させて確かめた
- Bの分だけ本編に1行足すか、付録へ回した
- Cは本番前に決め、付録の番号を控えた
なお、試したのはダミー資料1つ・ChatGPT無料版で各1〜2回です。別の資料やAIでは結果が変わるかもしれません。
ポイント
AIが出すのは穴の一覧であって、答えではありません。答えを書かせると、穴は見えなくなります。
次のアクション
方向は3つ——体系的に学ぶ、資格で「できる」を可視化する、AIスキルが評価される環境を選ぶ。
まずは今日、手元の資料で手順1だけ試してみてください。見えていなかった穴が箇条書きで並びます。
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パワポの枚数を減らす方法|AIに削るスライドを選ばせて持ち時間に収める
Bに仕分けた根拠を付録に回すなら、こちらの付録(Appendix)の作り方をどうぞ。削る記事と塞ぐ記事、2本セットで使えます。

